今年の締めくくりは、旅の話で。
旅によって私の人生は大きく変わった、と言っても過言では無い。
人生を大きく変えたのは、19歳の夏、初めての海外一人旅だった。
親友と叔母夫婦がたまたま、アメリカのサンノゼという同じ土地に住んでいたので、それぞれに滞在させてもらうプラン。
ということで、まるっきり一人旅だったわけではないが、異国の地へ一人きりで赴くという貴重な初体験だ。
ちなみに元はというと、地元を遠く離れた友人に「遊びに行くからね」と言った言葉を口だけにはしたくなかった、というのが後押ししたのだが、本当に良いきっかけをくれたと感謝している。
ともあれ、この滞在は何もかもが衝撃だった。
観光地ではなく、現地での普通の暮らしを覗けたのがなおさらだったのだと思う。
そこにある「普通」は、これまでの私をとりまく「普通」とは何から何まで違っていたから。
気候が違うから、生えている植物が違う。
土地が広大だから、家の建ち方が違う。
人のキャラクターもまるで違う、店員さんまでフランクで形式ばっていない!
中でも忘れられない出来事がある。
友人の仲の良いグループに連れられて、ベトナム料理屋に行ったときのことだ。
ネイティヴばりに英語を話す同年代の日本人に囲まれながら、「サキも英語で注文してみなよ!」と言われた。
けれど、遂に私は注文することができなかった。
ショックだった。
教科としての英語は得意で、成績も良かったにもかかわらず、全く喋ることができなかった。
これまで私が学んできた英語は、成績を獲得するためのお勉強にすぎず、本来の目的である「言葉」ではなかったのだ。
それから帰国した私は、「コミュニュケーション手段としての英語」を勉強しまくった。
同時になるべく多くの国に行ってみようと思い、先ずは英語圏からだ、ということで、オーストラリア、ニュージーランド、カナダと長期の休みを使っては、短期留学がてら訪れた。
こうして英語を使うことと、海外に一人で行くことにも慣れていった。
幸い社会人になっても、勤めた会社が海外に行きやすい環境だったこともあり、時間とお金を作っては各地に訪れた。
そんな私が、あの一人旅デビューをした19歳から約10年経ち、初めて1年間一度も海外に行かなかった年がある。
それが、隠岐の島に来た年だ。
これには自分自身でも驚いた。
隠岐の島との衝撃の出逢い、そこでの生活で私は非常に満たされてしまった、というわけだ。
旅、特に一人で行くあてもない旅は、きっと自分でもわかっていないが満ち足りていない何かを求めての行動なんだ。
正体不明のモヤモヤと闘うあいだは、誰もジャンジャンと旅に出れば良いと、改めて思う。
さて。最後に、佃屋の本年最後のお客さまのお話しを。
この日は、俳句の会というご年配(と言うには余りにも若々しかったですが)のグループと、ヒッチハイクで旅をしているという大学生2人組。
普段ではそう関わることの無い組み合わせでしたが、思いもよらぬ大盛り上がり。
親戚が集まった年末の本家、のような状態になっていました。
朝、自転車で先に出る大学生2人を、いつまでも心配そうにお見送りする奥さまの姿。お孫さんを見送るように愛に溢れた眼差しでした。
旅は何と言っても出逢い。そういう意味では、お互い忘れられない旅になったんじゃないかな…と思いつつ。
さて、ちなみにこれからなんと、佃屋のリピーターさんたちと、島根のある場所で忘年会です。
なんたるご縁に感謝しながら…みなさまも、良いお年を!!